2004.06.18
日立LG製DVDスーパー マルチ ドライブGSA-4120B(バルク)を購入したので(→関連記事)、5倍速DVD-RAMに関するベンチマーク テストを行ってみました。
【関連】
→ GSA-4120B DVD-RAM & パケットライト
→ LF-M721JD 5倍速DVD-RAMベンチマーク
→ LF-M721JD 5倍速DVD-RAM (2)
→ GSA-4040B DVD-RAMベンチマーク
→ GSA-4040B パケットライト
DVD-RAMメディアの構造はZCLV (Zone Constant Linear Velocity)ですが、これまでの2倍速/3倍速DVD-RAMはディスク上のどこをアクセスしても転送速度が一定になる制御方式を使っていました。
しかし、GSA-4120Bの5倍速DVD-RAMはPCAV(Partial Constant Angular Velocity)という方式を使っています(PCAVはパーシャルCAVとも言います)。これは、最初の内周部はCAV(Constant Angular Velocity)方式をつかいます。途中からCLV(Constant Linear Velocity)方式になります。最初のCAV方式を使う内周部はディスク回転数(角速度)が一定しており外周に進むにしたがって転送速度が速くなっていきます。途中、最大速度に達するとCLV方式になり、その後はずっと転送速度(線速度)は一定ですが、外周に進むにしたがってディスク回転数が下がります。
具体的に5倍速DVD-RAMでどうなるかというと、最初の内周部は3倍速からはじまってだんだん転送速度があがって全体の3分の1程度に達したところで5倍速になり、その後はずっと5倍速となります。
したがって、常に5倍速の速度が出るわけではなく、平均すると4.4倍速くらいになると思います。
下のグラフはNero DVD Speedを使って5倍速DVD-RAMの転送速度(読込)を計測した結果です。緑が転送速度で、黄色が回転数を表しています。
書込時にはDVD-RAMはベリファイが自動的に行われるので、その半分の2.2倍速程度か、ベリファイを行う際のロスを加味するともう少し遅くなると予想されます。
実際にディスク容量一杯(4,527,088,896バイト)のデータを読み書きする時間を測ると、読み込みは12分6秒(平均 4.56倍速)、書き込みは26分22秒(平均 2.09倍速)程度となりました。
DevTest ベンチマークテスト
ベンチマーク テストは ソフトウェアライブラリ に登録しているDevTest を使いました。ただし、公開しているDevTestは書き込みテストは実行できません(書き込みテストを実行するとファイルシステムを破壊して危険ですので)。
テストは比較のため日立LG GSA-4040B(→関連記事)についても行いました。
これまでDevTestを使ったベンチマークでは、ディスクの内周部と外周部の2ヵ所で速度を計測していましたが、PCAV方式の5倍速DVD-RAMでは内周部は最大速度が出ないので、--trackZone 50 オプションを指定して半分の容量を使った場所でも計測しています。
以下がベンチマークテストの結果です。テストの内容等はDevTestのドキュメントを参考にしてください。
DVD-RAM BENCHMARK |
TEST |
GSA4120B DVD-RAM 5x |
GSA4120B DVD-RAM 3x |
GSA4120B DVD-RAM 2x |
GSA4040B DVD-RAM 3x |
GSA4040B DVD-RAM 2x |
Test Unit Ready command |
1.6ms |
1.6ms |
1.9ms |
2.0ms |
2.0ms |
No Motion Seek command |
15.8ms |
15.7ms |
15.7ms |
11.4ms |
10.7ms |
Average latency Time |
36.7ms |
36.8ms |
54.4ms |
36.7ms |
54.8ms |
Sequential Seek command |
15.7ms |
15.7ms |
15.6ms |
10.3ms |
11.0ms |
Random Seek command |
117.6ms |
107.3ms |
123.7ms |
110.4ms |
111.1ms |
|
SIZE |
|
|
|
|
|
Sequential Read/Start |
2048B |
896.5kB/s |
843.0kB/s |
746.3kB/s |
713.0kB/s |
734.7kB/s |
16384B |
3994.0kB/s |
4130.6kB/s |
2779.1kB/s |
4119.2kB/s |
2708.5kB/s |
65536B |
4121.4kB/s |
4114.2kB/s |
2768.6kB/s |
4106.9kB/s |
2737.9kB/s |
Sequential Read/50% |
2048B |
701.7kB/s |
826.2kB/s |
723.4kB/s |
723.6kB/s |
740.9kB/s |
16384B |
5951.0kB/s |
4527.4kB/s |
2772.6kB/s |
4119.6kB/s |
2659.6kB/s |
65536B |
6837.5kB/s |
4136.0kB/s |
2746.9kB/s |
4106.9kB/s |
2692.0kB/s |
Sequential Read/End |
2048B |
713.6kB/s |
875.6kB/s |
723.4kB/s |
726.3kB/s |
749.3kB/s |
16384B |
4729.5kB/s |
4116.0kB/s |
2772.6kB/s |
3737.3kB/s |
2670.4kB/s |
65536B |
6830.2kB/s |
4106.9kB/s |
2746.9kB/s |
4099.6kB/s |
2743.3kB/s |
Sequential Read/Ave. |
2048B |
770.6kB/s |
848.3kB/s |
734.9kB/s |
721.0kB/s |
741.7kB/s |
16384B |
4891.5kB/s |
4258.0kB/s |
2775.8kB/s |
3992.1kB/s |
2679.5kB/s |
65536B |
5929.7kB/s |
4119.0kB/s |
2757.8kB/s |
4104.5kB/s |
2724.4kB/s |
Random Read |
2048B |
13.9kB/s |
13.0kB/s |
13.3kB/s |
12.6kB/s |
12.1kB/s |
16384B |
180.1kB/s |
166.0kB/s |
150.0kB/s |
167.5kB/s |
159.6kB/s |
65536B |
421.5kB/s |
417.3kB/s |
346.1kB/s |
340.7kB/s |
338.2kB/s |
Sequential Write/Start |
2048B |
558.4kB/s |
625.7kB/s |
539.0kB/s |
489.4kB/s |
522.6kB/s |
16384B |
1905.3kB/s |
1861.0kB/s |
1391.6kB/s |
1753.5kB/s |
1395.7kB/s |
65536B |
2054.4kB/s |
2061.2kB/s |
1447.1kB/s |
1944.2kB/s |
1465.8kB/s |
Sequential Write/50% |
2048B |
648.5kB/s |
583.7kB/s |
526.5kB/s |
522.7kB/s |
544.5kB/s |
16384B |
2015.1kB/s |
2000.0kB/s |
1357.4kB/s |
1820.1kB/s |
1459.8kB/s |
65536B |
3069.1kB/s |
2107.8kB/s |
1236.9kB/s |
1840.1kB/s |
1429.1kB/s |
Sequential Write/End |
2048B |
626.2kB/s |
606.8kB/s |
526.5kB/s |
534.7kB/s |
499.4kB/s |
16384B |
1838.6kB/s |
1384.1kB/s |
1357.4kB/s |
1669.3kB/s |
1391.2kB/s |
65536B |
1949.5kB/s |
1367.3kB/s |
1236.9kB/s |
1670.3kB/s |
1224.1kB/s |
Sequential Write/Ave. |
2048B |
611.0kB/s |
605.4kB/s |
532.8kB/s |
515.6kB/s |
522.1kB/s |
16384B |
1919.7kB/s |
1748.3kB/s |
1374.5kB/s |
1747.6kB/s |
1415.6kB/s |
65536B |
2357.6kB/s |
1845.4kB/s |
1342.0kB/s |
1818.2kB/s |
1373.0kB/s |
Random Write |
2048B |
24.7kB/s |
22.2kB/s |
23.2kB/s |
23.0kB/s |
22.9kB/s |
16384B |
107.4kB/s |
81.8kB/s |
88.0kB/s |
97.0kB/s |
88.8kB/s |
65536B |
217.7kB/s |
122.1kB/s |
165.5kB/s |
83.2kB/s |
173.2kB/s |
下のグラフはテスト結果を元に65536バイト時のSequential Read/50%.、Random Read、Sequential Write/50%、Random Write をグラフ化したものです。
5倍速 DVD-RAMについて
結果を見るとGSA-4120B 5倍速DVD-RAMの転送速度は読込6837kB/秒、書込3069kB/秒ですから、DVDでの倍速にするとそれぞれ4.9倍速と2.2倍速程度となります。
読み込みについてはほぼ5倍速出ていますが、書き込みについてはベリファイのロスが大きいのか、読み込みの半分よりも少し遅くなっています。
もう少し詳しく見ていくと、ディスク内周部は3倍速から始まるので、
Sequential Read/Start 65536B = 4121.4kB/s(2.98倍速)
Sequential Write/Start 65536B = 2054.4kB/s(1.48倍速)
と、3倍速DVD-RAMとまったく同じ性能です。
しかし、半分程使ったところでは、
Sequential Read/50% 65536B = 6837.5kB/s(4.94倍速)
Sequential Write/50% 65536B = 3069.1kB/s(2.22倍速)
と、読み書きともに5倍速DVD-RAMの性能が出ています。
この後は、この速度がずっと維持されるはずですが、外周部の結果は、
Sequential Read/END 65536B = 6830.2kB/s(4.93倍速)
Sequential Write/END 65536B = 1949.5kB/s(1.41倍速)
このように、読み込みはほぼ5倍速のままですが、書込は実質1.41倍速まで落ちています。
これは以前にも説明したことがありますが(→ 関連記事)、ベリファイを行う際に多少のロスがあるからだと思われます。
ディスクというのは回転していますから、ディスク上のある1点にアクセスするためには、ディスクが回転してくるのを待つ必要があります。
ディスクの回転数が速ければ速いけど、素早くアクセスできる理屈です。
5倍速DVD-RAMのPCAV方式では、後半はCLV方式により転送速度(線速度)は一定ですが、外周にいくにしたがって、回転数(角速度)は下がっていきます。ディスクの外周部ほど回転が遅いので、素早くアクセスできないというわけです。
ベンチマーク結果からも、2048Bとか16834Bとかの小さな単位の読み書きは、外周部が少し遅いのがわかると思います。
DVD-RAMの書込時にはベリファイが行われますが、書き込みからベリファイ(読み込み)に移行する際に、タイミングや場所によってはディスクの回転を待つ必要があり、回転の遅い外周部では実質的な書き込みが遅くなります。
このベリファイ時のロスタイムは、5倍速DVD-RAMだけにあるわけではなく、2倍速/3倍速DVD-RAMでも同じです。
理屈の上では、トラック1周分ちょうどぴったりのデータを書き込めば、書き込みからベリファイ(読み込み)に移行するロスタイムを少なくできるはずですが、OSやアプリケーションからはそんなことはわからないので、なかなか難しいところです(理想をいえばドライブのファームがトラックあたりのセクタ数を考慮して最適化してくれた上で書き込みしてくれるといいのですけど)。
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2004.07.10 追記
後半の外周部で書込速度が実質1.41倍速まで落ちるのは、いくらなんでもおかしいと思い、ディスク全領域で読み書きの速度がどのように変化するか調べてみました。下のグラフがその結果です。
読み込みについては最初に載せたNero DVD Speedのグラフと同じで、3倍速から徐々に速度が上がって5倍速に達すると以後はその速度をキープしています。しかし、Nero DVD Speedのグラフの分解能が足りなくてよくわからなかったと思いますが、グラフは階段状になっており、段階的に速度が切り替わっているのがわかると思います。後半のCLV部分では、一定間隔で下にヒゲが伸び一時的に速度が落ちています。
この階段状や一時的に速度が落ちている部分が、DVD-RAMの特徴であるZCLVフォーマットのゾーンにあたります。
書込速度をみると、ゾーンによって速い箇所と遅い箇所があるのがはっきりわかります。
これは、1トラックあたりのセタク数がゾーンによって異なるので、書き込みからベリファイ(読み込み)を行う際のロスタイムが、ゾーンによって異なるからだと思います。
先のテストで後半の書込速度が実質 1.41倍速まで落ちたのは、たまたま遅いゾーンや、ゾーンの区切り部分に当たってしまったものと思われます。
ゾーンによっては書込速度が変ってしまうのはアプリケーションとの相性かと思います。相性といっても原因もわからない曖昧なものではなく、書き込み開始位置(アドレス)と一度に書き込みするデータサイズによって変化するものと思われます。
このテストでは64Kバイトごとにデータを書き込んでいますが、データサイズを32Kバイトとか128Kバイトとかに変えるのと、速いゾーンと遅いゾーンの関係も変るはずです(理想をいえばゾーン毎に書き込みするデータサイズを最適化すれば速くなるはず)。
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2倍速/3倍速 DVD-RAMとの比較
GSA-4120Bの、2倍速/3倍速DVD-RAMとしての性能は、気にしなければならないほどの差はありません。従来モデルのGSA-4040Bと比較してもほとんど同じです。
ただし、細かく結果を比較すると多少の違いはあります。
3倍速DVD-RAMについて比較すると、GSA-4040BよりGSA-4120Bのほうがコマンドに応答速度が速いようで、小さなデータをたくさん読み書きするとGSA-4120Bのほうがほんの少し速いようです。ただし、この程度では体感には出ないと思います。
2倍速DVD-RAMについては、GSA-4040Bと比較すとGSA-4120Bのシークが少し遅いようですが、実際の読み書きやランダムアクセスでは差が出ていないので、まったく同じと考えていいようです。
まとめ
今回はDevTestのベンチマークだけですが、次回はファイルの実際のファイルの読み書きの速度等のテストを行うつもりなので、まとめはそのときにでもしようと思います。
5倍速DVD-RAMは最初のほうは3倍速なので、1Gバイト程度の読み書きでは、3倍速DVD-RAMとの差があまり出ません。それで、4Gバイトくらい読み書きするテストをやっていて、結果が出るのにいつもより時間がかかっています。
続きはこちらを、→ GSA-4120B DVD-RAM & パケットライト
【関連記事】
以下のページでもDVD-RAMドライブに関するテストを行っています。
テスト環境が異なるので今回のテストとは直接比較はできませんが、参考にしてください。
→ 2004.07.13 LF-M721JD 5倍速DVD-RAMベンチマーク
→ 2004.07.15 LF-M721JD 5倍速DVD-RAM (2)
→ 2004.03.30 薄型DVDスーパーマルチドライブUJ-820 DVD-RAMベンチマーク
→ 2003.08.05 GSA-4040B DVD-RAMベンチマーク
→ 2003.08.13 GSA-4040B パケットライト
→ 2003.09.19 DVD-RAM ソフトウェア RAID/Linux
→ 2003.12.14 DVD-RAM ソフトウェア RAID/Linux (2)
→ 1998.05.24 DVD-RAMドライブ ベンチマーク
→ 2000.07.25 4.7GB DVD-RAM Panasonic LF-D200JD リポート
→ 2002.09.21 DVDマルチドライブ DVR-ABH2 ベンチマーク
→ 2003.09.04 SW-9571 DVD-RAMマルチ ドライブ購入
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