2004.03.30
Panasonic 薄型DVDスーパーマルチ ドライブUJ-820を購入(→関連記事)したので、DVD-RAMに関するベンチマーク テストを行ってみました。
【関連】
→ 薄型DVDスーパーマルチドライブUJ-820 DVD-R測定
UJ-820はノート用薄型ドライブとしては初めて全記録型DVDに対応した製品です。通常のATAPI内蔵型や外付の記録型DVDドライブと比較すると、書き込み速度等のスペックは一段劣っていますが、非常にコンパクトでノートパソコンにも内蔵できるのが魅力です。
まだ発売されたばかりということもあって、UJ-820を採用したノートパソコンはまだ少ないようですが、このドライブしたポータブル型USB2.0接続ドライブとしてPanaosnic LF-P667Cが発売されています。
その気になれば、ノートパソコン内蔵のCD/DVDドライブをUJ-820に交換することもできます。実際、うちではHP/Compaq Evo mobile workstation N800w(→raptor)の内蔵DVD-ROM/CD-RWコンボドライブをUJ-820に交換しました(→関連記事)。
DevTest ベンチマークテスト
DVD-RAMドライブ |
テスト環境 |
Panasonic UJ-820 |
HP/CompaqEvo mobile workstation N800w( →raptor) CPU Intel モバイルPentium 4 2.2GHzRAM 512Mバイト内蔵ATAPI接続OS Windows XP Professional |
Panasonic SW-9571 |
GIGABYTE GA-8IPE1000 Pro2 (→wiluna IV)CPU Celeron 2.8GHzRAM 512MバイトKEIAN KP550C/USB2.0接続OS Windows 2000 Professional |
日立LG GSA-4040B |
MSI 845PE Max2-FIR(→belfast III)CPU Pentium 4 2.53GHzRAM 512M内蔵ATAPI接続OS Windows 2000 Professional |
ベンチマーク テストは ソフトウェアライブラリ に登録しているDevTest を使いました。ただし、公開しているDevTestは書き込みテストは実行できません(書き込みテストを実行するとファイルシステムを破壊して危険ですので)。
テストはUJ-820以外に、比較のためPanasonic SW-9571-CYY(→関連記事)と、日立LG GSA-4040B(→関連記事)についても行いました。DVD-RAMの速度は、UJ-820とSW-9571は2倍速ですが、GSA-4040Bでは3倍速にも対応しているので、2倍速と3倍速とぞれぞれテストを行っています。
テスト環境は、右の表を見てください。
以下がベンチマークテストの結果です。テストの内容等はDevTestのドキュメントを参考にしてください。
DVD-RAM BENCHMARK |
TEST |
UJ-820 DVD-RAM 2x |
SW-9571 DVD-RAM 2x |
GSA-4040B DVD-RAM 2x |
GSA-4040B DVD-RAM 3x |
Test Unit Ready command |
0.3ms |
0.4ms |
1.9ms |
1.9ms |
No Motion Seek command |
10.0ms |
6.0ms |
15.7ms |
15.7ms |
Average latency Time |
37.0ms |
36.8ms |
54.4ms |
36.7ms |
Sequential Seek command |
11.6ms |
9.4ms |
15.6ms |
15.7ms |
Random Seek command |
147.7ms |
107.7ms |
123.7ms |
113.6ms |
|
SIZE |
|
|
|
|
Sequential Read/Start |
2048B |
1094.4kB/s |
1557.6kB/s |
746.3kB/s |
731.1kB/s |
16384B |
2721.5kB/s |
2703.3kB/s |
2779.1kB/s |
4112.8kB/s |
65536B |
2712.4kB/s |
2706.4kB/s |
2768.6kB/s |
4077.7kB/s |
Sequential Read/End |
2048B |
840.3kB/s |
1484.3kB/s |
723.4kB/s |
712.0kB/s |
16384B |
2714.3kB/s |
2706.7kB/s |
2772.6kB/s |
3647.1kB/s |
65536B |
2703.4kB/s |
2701.2kB/s |
2746.9kB/s |
4070.9kB/s |
Sequential Read/Ave. |
2048B |
967.4kB/s |
1521.0kB/s |
734.9kB/s |
721.6kB/s |
16384B |
2717.9kB/s |
2705.0kB/s |
2775.8kB/s |
3880.1kB/s |
65536B |
2707.9kB/s |
2703.8kB/s |
2757.8kB/s |
4074.4kB/s |
Random Read |
2048B |
8.6kB/s |
10.6kB/s |
13.3kB/s |
14.3kB/s |
16384B |
133.6kB/s |
142.4kB/s |
150.0kB/s |
157.4kB/s |
65536B |
276.4kB/s |
330.1kB/s |
346.1kB/s |
389.1kB/s |
Sequential Write/Start |
2048B |
774.9kB/s |
1047.2kB/s |
539.0kB/s |
532.7kB/s |
16384B |
1397.1kB/s |
1382.4kB/s |
1391.6kB/s |
1785.8kB/s |
65536B |
1293.6kB/s |
1398.1kB/s |
1447.1kB/s |
1947.7kB/s |
Sequential Write/End |
2048B |
795.5kB/s |
1144.3kB/s |
526.5kB/s |
539.0kB/s |
16384B |
1361.5kB/s |
1330.5kB/s |
1357.4kB/s |
1682.0kB/s |
65536B |
986.2kB/s |
1328.4kB/s |
1236.9kB/s |
1622.9kB/s |
Sequential Write/Ave. |
2048B |
785.2kB/s |
1095.7kB/s |
532.8kB/s |
535.8kB/s |
16384B |
1379.3kB/s |
1356.4kB/s |
1374.5kB/s |
1733.9kB/s |
65536B |
1139.9kB/s |
1363.3kB/s |
1342.0kB/s |
1785.3kB/s |
Random Write |
2048B |
35.9kB/s |
40.9kB/s |
23.2kB/s |
22.4kB/s |
16384B |
101.2kB/s |
142.1kB/s |
88.0kB/s |
96.3kB/s |
65536B |
168.0kB/s |
213.2kB/s |
165.5kB/s |
134.8kB/s |
下のグラフはテスト結果を元に65536バイト時のSequential Read/Ave.、Random Read、Sequential Write/Ave、Random Write をグラフ化したものです。
連続したシーケンシャル・リード/ライトについてのUJ-820の性能は、他のDVD-RAMドライブとほぼ同じです。読み込みは約2700kバイト/秒、書き込みはベリファイが自動的に行われるので半分の約1300kバイト/秒の速度はちゃんと出ています。
DVD系の1倍速は規格で1385kバイト/秒と決まっているので、2倍を語るのならその速度が出ないとおかしいので、当たり前ですけど。
平均シークタイム(Random Seek Time)は速い順に並べるとSW-9571 107.7ms > GSA-4040B 123.7ms > UJ-820 147.7msとなり、UJ-820が一番遅いためランダム・リード/ライトは他のドライブより少し遅くなっています。
しかし、旧モデル(LF-P567C)のスペックを見るとシークタイム180msとさらに遅いので、ポータブル型DVD-RAMではUJ-820が一番速いはずです。
DVD-RAMはZCLV(Zone Constant Liner Velocity)という方式を採用しており、トラック位置によって区切られたゾーン毎に1トラックあたりのセクタ数が異なります。4.7G DVD-RAMのゾーン数は35あり、最内周ゾーンでは25セクタ、最外周ゾーンでは59セクタとなっています(2.6G DVD-RAMはゾーン数24、最内周ゾーンの17セクタ、最外周ゾーン40セクタとなっています)。
セクタサイズは2048バイトですから、最外周ゾーンではディスクが1回転すると59×2048B=120,832バイトの転送、最内周ゾーンでは25×2048B=51,200バイトの転送が可能です(内周部で65536バイト単位より16384B単位のほうが速くなるケースがあるのは、このせいではないかと)。
このようにDVD-RAMではゾーン毎に1回転で転送できるデータサイズ(セクタ数)が異なるのですが、ディスクの回転数もゾーン毎に変え転送速度は一定に保たれています。1トラックあたりのセクタ数の少ない最内周ゾーンては回転を速く、セクタ数の多い最外周ゾーンでは回転を遅くしています。
DVD-RAMでは書込後にデータを読込して正しく記録できたか確認(ベリファイ)しますが、書込から読込に移行するのにディスクが回転するのを待つ必要があります。このため、ベリファイをともなう書き込みは回転速度の速い内周部のほうが少しだけ速くなっています。
また、比較的小さなデータをたくさんやりとりする場合でも、回転数の速い内周部を使ったほうが回転待ち時間のロスタイムが少ないので有利です。
転送データサイズが大きい場合には、1回転でたくさんデータ転送できる外周部のほうが速そうですが、転送速度を一定に保つために外周ゾーンほど回転速度を下げているので、内周も外周も差はありません。
ベンチマークの結果からもこれらの特性はわかると思います。
このような1トラックあたりのセクタ数と回転数の違いにより内周部と外周部で多少の速度差が発生しますが、ベンチマークテストの結果を見てわかるとおりその差はわずかです。ハードディスクなんかだと、内周部と外周部で倍近く差がでます。
MOドライブは最新のGIGAMOではZCLVを採用して内周と外周の速度差を縮めているドライブもあるようですが、やはり速度に差があります。これがあるからMOは一定の転送速度で読み書きする動画や音声などのマルチメディア用途では使いにくいような気がします。一番遅いところを基準にするとDVD-RAMよりも遅くなってしまいます。
ファイル作成/読込/削除ベンチマークテスト
DevTestのベンチマークの結果だけでは、ファイルの読み書きの速度がよくわからないと思うので、比較サイズの小さいファイルを大量に作成してその速度を調べるというベンチマークテストを行ってみました。
比較的サイズの大きなファイルを読み込みする場合には、ドライブの転送速度がそのまま出るのでDevTestの結果で十分わかります。しかし、小さなファイルを大量に読み書きすると、単純な転送速度だけでは測れないので、実際にやってみるしかありません。
テスト内容については以前書いたパケットライトの記事(→ GSA-4040B パケットライト)を参考にしてください。そのときと同じテストプログラムを使っています。テストプログラムfcvは掲示板(→BBS)に登録してあります。
前回はファイルサイズの総計が約100Mバイトまでという範囲でテストしましたが、今回は約1Gバイトと大きくとってみました。
簡単に説明すると、総計1Gバイトの2万1105個のファイルを作成(書き込み)した時間、それをすべて読み込む時間、削除した時間を計測します。DVD-RAMは主にUDF1.5/UDF2.0/FAT32の3種類のフォーマットで利用されていますが、今回はUDF2.0とFAT32についてテストしています。UDF1.5とUDF.0はどちらを使用しても速度の差はほとんどありません。
結果は以下の表のとおりです。参考のためUJ-820を取り付けているノートパソコン(→raptor)のハードディスクでの結果も掲載しています。
TEST DRIVE FORMAT |
Write |
Read |
Delete |
time (sec) |
speed (kB/s) |
time (sec) |
speed (kB/s) |
time (sec) |
UJ-820 2x
| UDF2.0 |
18分48秒 |
951.9kB/s |
11分10秒 |
1602.6kB/s |
8分12秒 |
FAT32 |
32分56秒 |
543.4kB/s |
8分32秒 |
2097.2kB/s |
22秒 |
SW-9571 2x
| UDF2.0 |
16分52秒 |
1061.0kB/s |
9分48秒 |
1826.1kB/s |
2分03秒 |
FAT32 |
28分13秒 |
634.2kB/s |
8分28秒 |
2113.7kB/s |
28秒 |
GSA-4040B 2x
| UDF2.0 |
17分10秒 |
1042.5kB/s |
9分49秒 |
1823.0kB/s |
2分44秒 |
FAT32 |
38分22秒 |
466.4kB/s |
9分12秒 |
1945.2kB/s |
58秒 |
GSA-4040B 3x
| UDF2.0 |
12分52秒 |
1390.9kB/s |
7分15秒 |
2468.4kB/s |
2分18秒 |
FAT32 |
28分15秒 |
633.5kB/s |
6分53秒 |
2599.9kB/s |
1分00秒 |
HARD DISK
| NTFS |
2分11秒 |
8196.5kB/s |
1分43秒 |
10424.7kB/s |
31秒 |
下の図は、書き込みと読み込み速度をグラフにしたものです。ハードディスクについてはDVD-RAMと速度が違い過ぎるので除いています。
UJ-820はランダムシーク性能が劣るために、他の2倍速DVD-RAMドライブと比較して2〜3分ほど余計に時間がかかっているようです。
たとえば、UDF2.0での書き込みSW-9571/GSA-4040B(2x)が17分前後なのに対して、UJ-820は18分48秒かかっています。今回のテストはファイルサイズは総計で1Gバイトでしたが、これが4GバイトだとしたらSW-9571は約67分、UJ-820は約75分ということになります。
個人的にはこの程度の差であれば、それほど気にすることはないと思っています。
同じ2倍速でもFAT32使用時の書き込み速度はUJ-820のほうがGSA-4040Bよりも速いようです(もっともFAT32は書込が遅くて使う気がしないと思いますが)。
UJ-820ではありませんが興味深いのはのはFAT32の書込速度はSW-9571 2倍速とGSA-4040B 3倍速がほぼ同です。
転送速度は3倍速のGSA-4040Bのほうが速いのですが、ランダムシーク性能はSW-9571のほうが上なので、転送速度の差を埋めてしまっているようです(松下ドライブと比較するとGSA-4040Bはランダムアクセスで劣るようです)。
このことからもわかるようにFAT32の書込はランダムシーク性能に大きく依存しています。
読み込みについてはOSのキャッシュの効果もあってか、FAT32は最速なのですが、書込速度がUDF2.0の半分程度ではあまり使う気がしません。
またこのテストでドライブのスペックよりも遅い速度しか出ていないのは、比較的小さなファイルを大量に扱うからであって、大きなファイルを少量扱うケースならもっと速くなり、速度の差も縮みます。
まとめ
UJ-820は通常のATAPI内蔵型や外付の記録型DVDドライブと比較するとシーク性能の違いで少し速度が劣るようですが、1Gバイトにつき数分遅い程度です。
もともとDVD-RAMは書き込み速度が遅いのでUJ-820の速度に不満なら、他の2倍速DVD-RAMドライブでも同じように遅いと感じるはずです。もうすぐ5倍速DVD-RAMが出るようですが、ポータブル型は3倍速も出ていません。
デスクトップ向けのATAPI内蔵型や外付ドライブと比較すると多少遅いのは仕方ありませんが、ノートパソコンに内蔵できるDVDマルチドライブとしてはもっとも高性能なドライブなのは間違いありません。
ノートパソコンで使用することを考えると外付ドライブでは持ち運びが面倒になってしまい、UJ-820は内蔵ドライブとして利用できるからこそ価値があります。ノートパソコンではストレージの容量も拡張性も限られていますし、メディアを交換して気軽ファイルの出し入れができるDVD-RAMが利用できるのは非常に便利です。
【関連記事】
以下のページでもDVD-RAMドライブに関するテストを行っています。
テスト環境が異なるので今回のテストとは直接比較はできませんが、参考にしてください。
→ 2004.07.13 LF-M721JD 5倍速DVD-RAMベンチマーク
→ 2004.07.15 LF-M721JD 5倍速DVD-RAM (2)
→ 2004.06.18 GSA-4120B 5倍速DVD-RAMベンチマーク
→ 2004.06.20 GSA-4120B DVD-RAM & パケットライト
→ 2003.08.05 GSA-4040B DVD-RAMベンチマーク
→ 2003.08.13 GSA-4040B パケットライト
→ 2003.09.19 DVD-RAM ソフトウェア RAID/Linux
→ 2003.12.14 DVD-RAM ソフトウェア RAID/Linux (2)
→ 1998.05.24 DVD-RAMドライブ ベンチマーク
→ 2000.07.25 4.7GB DVD-RAM Panasonic LF-D200JD リポート
→ 2002.09.21 DVDマルチドライブ DVR-ABH2 ベンチマーク
→ 2003.09.04 SW-9571 DVD-RAMマルチ ドライブ購入
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